知る人ぞ知る、
出雲の燻製工房を訪ねて
旬の味覚を味わうとき、見えてくる風景がある——。この里山の風土に息づく味な物語を訪ねるシリーズ第6回目は、出雲のスモークソーセージ。火へのあくなき憧れを抱いた火山写真家が、もうひとつのなりわいとして選んだ「燻製」。それは、いつしか知る人ぞ知る美味となりました。そして今、その信念を受け継ぎ、唯一無二のものづくりを続けるご家族にお話を伺いました。
「スモークハウス白南風」さんのスモークソーセージがお取り寄せできます

スモークソーセージ(3本)
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島根県産の豚肉に、味つけは塩こしょう、そして煙だけ。色も、香りも、味も、自然の滋味にあふれたソーセージ。燻製担当の青木秀之さんによれば、「真空パックから出してしばらく空気に触れさせた方が、香りが開いてよりおいしくなる気がします」とのこと。
料理人・小野寺の記憶を呼び覚ました、懐かしい味
やわらかく奥深い燻製香のあとに、凝縮された肉の旨みがじんわり。「うちの子たち、これを見ると目の色が変わるんですよね」と、他郷阿部家の料理人・小野寺拓郎が目を細めます。幼い小野寺ジュニアが目を輝かせてかじりつくこのソーセージは、出雲の「スモークハウス白南風(しらはえ)」さん謹製の逸品。
小野寺が初めて「スモークハウス白南風」さんのベーコンやソーセージを味わったのは、この地に移住して他郷阿部家で働き始めてまもない頃。その時感じたのは、不思議な懐かしさだったそうです。

小野寺
「子どもの頃、うちの親父が燻製にハマって、いろんなものを燻製にしていたんです。その時食べた味を思い出したんですよね」
大量生産のものとは違う、素朴で実直な味。それを守り続ける「スモークハウス白南風」さんの創業は1985年。火へのあくなき憧れを抱き続けた出雲出身の火山写真家・青木章さんが、もうひとつのなりわいとして始めたものでした。塩こしょうだけで味つけした肉や魚を、スモークチップではなく、広葉樹の原木をじっくり焚いておだやかに燻すのがこだわり。やがて章さんの燻製は、食通の間でじわじわと「知る人ぞ知る」存在となっていったのです。


突然やってきた、
あるじ不在の日々の中で
しかし章さんは2023年夏、鹿児島県トカラ列島の火山島・諏訪之瀬島に出かけたまま、消息を絶ってしまわれました。現在は、章さんの妻・恵子さんと、甥の秀之さん、そして秀之さんの妻・陽子さんという3人で力を合わせ、工房を切り盛りしています。

突然のあるじの不在という、すぐには受け入れがたかったであろうその現実を、ご家族がどう乗り越えてきたのか。それは部外者には到底うかがい知ることのできないものですが、それでも燻製づくりの火が消えることはありませんでした。

レンガ造りの窯の前に据えられた火焚き番の丸椅子。長年章さんが座っていたその場所に、今座っているのは甥の秀之さんです。秀之さんが、それまでの勤めをやめて工房の手伝いをするようになったのは今から十数年前、ちょうど30歳の時でした。
秀之さん
「実家が農業をやっていましたし、私自身も食べものに興味があって、農業関係の仕事に就いたんですが、今の農業を巡る状況にどこかモヤモヤした思いもずっとあって……。その当時から、ここに時々遊びに来てはいたんです。叔父の燻製がおいしいことはわかっていましたし、すでに教科書ができあがってるような世界じゃなく、ここでしかできない仕事をやっていくのもいいかなと」

恵子さん
「私は、こんなうちでいいの?って念押ししたんですよ。それでもいいって言うから、まあ、やってみるだわね、って。夫は身内に対しては口数少ないんで、手取り足取り教えたりってことは一切なかったです。豚肉をさばいて塩漬けしたり腸詰にしたりするのはみんなで一緒にやっていたので、夫がいなくなっても問題なくできたんですが、スモークの見極めは大変でした。ざっくりと書きつけたメモはあったけど……」
秀之さん
「でもA4一枚ぐらいしかない」
恵子さん
「そこから想像を広げてね。でもどんな仕事でも、本当にやろうと思ったら、自分で経験して創意工夫するしかないんですよ。自分でやってみて、今日はちょっと色が薄かったねとか燻製かけすぎたねとか、塩がちょっと多かったねとか。その繰り返しですよね」

ヒッピーコミューンの暮らしで
出会った「燻製」
私たちは、改めて恵子さんに創業の頃のお話を伺うことにしました。
少年の頃から火の魅力に取り憑かれ、やがて日本各地の火山を訪ね歩くようになった章さん。当時は、アメリカから飛び火したヒッピーカルチャーの影響を受け、社会からドロップアウトした若者たちが、都会から遠く離れた場所でコミューン(共同生活体)を形成していた時代。章さんも一時は、鹿児島県トカラ列島の諏訪之瀬島のヒッピーコミューンに滞在していたことがありました。そのコミューンのメンバーには、詩人・山尾三省もいたそうです。

恵子さん
「そこでヒッピーの人たちが海で獲った魚を燻製にして、酒のつまみにしてたらしいです。それにヒントを得て出雲に帰ってきて、この辺はトビウオがたくさん獲れて安いですから、それを自己流の燻製にしてみたんです。ブロック塀で簡易な燻製窯をこしらえてね。そしたら、これはうまいじゃないかということで、たくさんつくったんですよね。それがまあ創業ということになりますが、そもそも商売なんてやったことないし売り先もわからないですよ(笑)」

恵子さん
「ですから当時撮っていた火山の写真をなんとかマスコミに売り込んで歩いて、どうにか暮らしながら細々と燻製を続けてました。まあ写真も燻製も、道楽みたいなもんですよね。とにかく夫は火を触ってられたら幸せなんですから」
燻製を始めた翌年には、現在の燻製窯を造営。不安定な暮らしが続く中、恵子さんは火山研究で家を空けがちな章さんに代わって、章さんの実家のぶどう農園を手伝ったり、病院に働きに出たりしながら家を守ってきました。
恵子さん
「最初の何年かは魚だけをやってたんですよ。この近海で獲れるアジや鯛、サバとか、みんな試してましたけど、保存性があって味もよく、商品になったのはトビウオと穴子でした。でもそのうち知り合いに、ベーコンとかつくらないの?って言われるようになって、それで肉もやるようになったんです」
やがて章さんのつくるベーコンは、ある高級スーパーの会長の目に留まり、県外の都市部にも届けられるように。ベーコンをつくる際に出る端材でソーセージをつくったり、平飼いの鶏を燻製にしたりと、章さんの燻製づくりも一層探求が進んでいきました。
恵子さん
「この頃からですね、ようやく燻製だけで食べられるようになって、私も外に働きに出なくてもよくなったんです」
自分だけの火を焚くこと
着色料や保存料といった添加物は一切使わず、使うのは、天日塩とポストハーベスト農薬不使用のこしょうだけ。製造に使う水は、すべて井戸から汲み上げるミネラル豊富な天然水。そして排水を汚す合成洗剤は使わない。火を焚くための原木は、近隣の山からもらってくるコナラや桜。「スモークハウス白南風」さんの営みには、自然回帰的な暮らし方を大切にしてきた章さんと恵子さんの哲学が反映されています。

恵子さん
「無添加できれいな発色に仕上げるためには、火持ちがよくて香りがやさしいコナラをじっくり何時間も焚いた後、最後だけ桜の木を足すんです。桜の方が色づきも香りも濃いですから。そういうのをひとつひとつ夫が実験してたどり着いたんです。煙で燻すのは、煮る、焼く、炒めるとかと同じ、ひとつの調理法だと夫はよく言ってました。たとえば昔の人は、鹿が獲れたらみんなでおいしく食べて、余った肉は囲炉裏の上にぶら下げて、燻して保存食にするというのを当たり前にやってたわけですよね」
秀之さん
「お客さんが来られるとよう言うとったよね、煙で食と人を結ぶ、“えん(煙)結びだ”って」
恵子さん
「そうそう、家族にはほとんど口きかないのに、取材の方とか、燻製のことを教わりたいって方が来られると、もう火がついちゃう。1時間どころじゃ帰れませんから(笑)」
そんな章さんの思いは、いま燻製担当を務める秀之さんにも脈々と受け継がれています。

秀之さん
「叔父がいなくなって、今まで40年近く買ってくださっていた方々の信頼を壊すんじゃないかっていう恐怖はずっとありました。夢に出てくることもありましたよ。1年以上やってきて、最近ようやく、こういうことだったんだな、と感じられるようになってきたというか。最初の頃は、叔父とまったく同じものをつくらないといけないと思っていたんです。でも次第にこう……叔父の味とちょっと違っても、喜んでいただける味なのであればそれもありなんじゃないかと思って模索しているところです」

恵子さん
「それはもう、同じ手順で同じようにやっても、つくる人が違えば違うものになりますよ。私は前々から言ってるんです。今あなたがつくってるのは青木章のスモークじゃない、青木秀之のスモークだよ、って。それは失敗もしながら自分で掴んでいくしかないんだって思いますね」
章さんは常々言っていたそうです。「火を焚くことは哲学であり、格闘なんだ」と。思いを受け継ぐとは、決して章さんとそっくり同じ味をつくることではなく、「自分だけの火を焚く」こと。自分が考え抜いた道を真っすぐ行くことが、唯一無二の味をつくるのでしょう。
手の届く範囲で、
納得いくものだけをつくりたい
今も、家族3人の手で、誠実につくれる量だけを手がける「スモークハウス白南風」さん。

秀之さん
「窯にたくさん入れすぎると煙の通りが悪くなってひとつひとつの香りが薄くなるし、かといってあまり間引いて煙が付きすぎてもよくない。いろいろ試行錯誤して、1回に最適な量も大体割り出せてきました。つくれる量がもう限られているので、オンラインで販売するとかは考えてないです。今以上にたくさんつくろうとすると質が下がってしまうし、それは今まで買ってくださっていた方々の信頼を失うことになっていまいますから」
恵子さん
「今の時代とは真逆かもしれませんけどね」
時代に流されず、独立独歩でものづくりを続ける青木家の皆さん。その姿を思い出すたび、燻製の味はひときわ深く、余韻の残るものになりそうです。
阿部家料理人・小野寺拓郎のレシピ
小野寺といえど、このスモークソーセージは何も手を加えずそのままが一番。他郷阿部家では、夕食後のバータイム(食堂横の蔵バーにご案内します)のおつまみとして定番です。お好みでマスタードを添えてどうぞ。

「スモークハウス白南風」さんのスモークソーセージがお取り寄せできます

スモークソーセージ(3本)
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「お名前、ご住所、お電話番号、商品名、個数」をお伝えいただけますとスムーズです。
島根県産の豚肉に、味つけは塩こしょう、そして煙だけ。色も、香りも、味も、自然の滋味にあふれたソーセージ。燻製担当の青木秀之さんによれば、「真空パックから出してしばらく空気に触れさせた方が、香りが開いてよりおいしくなる気がします」とのこと。

