この読みものは、2026年1月発売『とみとふく 76歳、古民家ひとり暮らしの登美さんと、保護犬フレンチブルドッグ福の幸せな日々』(小学館)より、第1章「福が来た」の一節を転載しています。
命名、福
保護犬を迎え入れることが決まってから孫たちの間で盛り上がったのは、その子に付ける名前である。
ちなみに以前は「パフェ」と呼ばれていたらしい。名は体を表すというように、初めて送られてきた写真は確かに「パフェ」という名が似合ってはいたが、私としてはフレンチブルドッグといえども古民家が立ち並ぶこの町で飼うには和風の名前が良いと考えていた。
ところが孫たちから出てくる名前は予想どおりカタカナ文字の名前ばかり。無理はない。平成女児の憧れの名前と昭和のババと名前の好みが合うわけがない。
孫たちがせっかく候補を挙げてくれているので最初からは言い辛かったが、ババはとっくに心に決めていた名前があった。
「この子の名前は福にしよう!」
人相、いや犬相を見ても福々しくて「福」という名がふさわしい。孫たちに福に決めたと伝えた時、その場の空気は固まって孫たちはきょとんとしていた。申し訳ない。
一緒に暮らし始めたらたぶん一日に何度も口にする名前だから、縁起の良い名前がいい。しかもシンプルで呼びやすいのがいい。そういう意味で福はベストな名前である。
実はこの名前には裏があって、フルネームは「赤福」なのだ。 私は三重県生まれ。郷土の銘菓「赤福」は大好物。若い頃は折箱8個入りは一気に平らげた。とはいえ、いくら大好きと言ってもそのまま犬の名前にするのは赤福さんに失礼すぎると考え、上の「赤」を隠して下の「福」だけにした。「赤」が隠してあることは身内しか知らない。


