ジャガードを共に追求し続ける長年のパートナー【岐阜県・ソトージェイテック】|ものづくりの仲間たち

※本記事は2018年に公開したものを2025年に再編集したものです。


群言堂のこだわりが詰まったジャガード生地の作り手、ソトーさん

トップスからアウター、ワンピースに至るまで、毎年多様なアイテムが生まれる「群言堂」のジャガード。

色や柄はもちろん、手ざわりや質感にもこだわって、自然や日々の暮らしに溶け込むようなオリジナルの生地づくりを追究しています。

そんなこだわりが詰まったジャガード生地を、共に作ってくださっているのが、尾州(びしゅう)産地の西部、岐阜県輪之内町に拠点を構える「株式会社ソトージェイテック(以下、ソトーさん)」。

尾州は、古くから繊維産業で栄えた国内一の毛織物産地。イタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並んで、世界三大産地のひとつと称されています。

感覚的なオーダーも、工夫が必要なアイディアも、想像以上の仕上がりに

ソトーさんとの出会いは、2004年。

折井(2025年現在は、群言堂を引退しています)が群言堂に加わった頃でした。

「私はそれまでニットは専門外で、わからないことだらけだったんです。そうしたら、『どういうものが作りたいか、とにかく想いをいっぱい伝えていただければ何でも作りますから』と言ってくださったの」(折井)

折井、ソトーさん岩田社長と小野内さん

それからはタッグを組んで、新しい生地づくりについてあれこれ考える日々。

「土壁に藁(わら)が練り込まれているような味わいを出したい」といった感覚的なイメージや、「表面に開けた穴からボーダー柄を覗かせたい」という技術的に工夫が必要なアイディアなどにも、長年応え続けてもらっています。

こだわりを詰め込むあまり、ソトーさんにとっては無理難題のような要望を出してしまうことも。

それでも現場では、「また銀ちゃん(“石見銀山”から取った愛称)からオーダー来たよ〜」と、冗談っぽく苦笑しながらも、試行錯誤を重ねてくださったそうです。

そして最終的には、長年職人を務める小野内さんの手によって想像以上の仕上がりに。美しく丈夫な、高品質の生地を作り上げてくださいます。

実際に、群言堂のジャガードアイテムを手にとってくださるお客さまも、何年も大切に着続けてくださる方が多いのです。

小野内さん

一緒に山を登るパートナー

「いろんなお題をもらって、力を合わせて答えを見つけて、評価していただいて。一緒に山を登ってきたような感覚です。お題のレベルはいつも高いですが、ものづくりの面白さを感じられて楽しかったですよ」と話すのは、当時の営業担当・江口さん(2025年現在は定年退職されています)。

10年以上もの間、職人さんとの架け橋となってくれました。

初代営業担当の江口さん

何度も街の婦人服ブランドを廻って、さまざまな生地を見て、さわって。「これのここが素敵」「こういう形なら作れるかもしれない」「次はこんな感じで作ってみよう」といったように、江口さんと折井で一緒に調査をしたこともあるのだとか。ものづくりに懸ける想いが詰まった密なコミュニケーションによって、言葉では表現しきれない感性や価値観まで共有できるパートナーになりました

折井

「『これをやってみたい』とアイディアを出すと、えぐっちゃん(江口さんの愛称)が『それはいいですね、新しいですね』なんていうふうに、力づけてくれるのよね。すごく褒め上手なんです。それで、なんとか形にしようとしてくださるの」(折井)

ソトーさんとのものづくりは、“ブランド”と“メーカー”の垣根を超えてきたからこそできるもの。

共に道なき道を進んで冒険を続けてきたパートナーなのです。

左から:服部さん、岩田社長、小野内さん

ものづくりには“楽しさ”が必要

ソトーさんの取材のなかで印象的だったのが、「何事にも“楽しさ”が必要だと思っているんです」という、岩田社長の言葉です。

「群言堂さんの仕事は、やったぶんだけ僕らも伸びる、と信じてやらせてもらっています。時間も手間もかかることが多いですが、効率を上げることだけが仕事じゃないので。もちろん、ものづくりをするうえで生産効率を求めるのは大切なことですが、それだけでは面白くありませんからね」(岩田社長)

社長に就任される以前から、長年ものづくりの現場で働かれてきた岩田社長。だからこそ、ものづくりにおける “楽しさ” をとても大切にされています。

「現場には、僕よりも年上の職人さんばかり。ほぼ皆さん、普段は僕のことを“社長”とは呼びません(笑)。ときには『威厳がない』なんて言われることもありますけど、よりよいものづくりするためには、僕も一緒になって遊んでいたほうが絶対に楽しいはずなので」と、岩田社長は笑います。

岩田社長と小野内さん

テキスタイル作りを担当してくださっている職人の小野内さんも、「壁を乗り越えることも一緒に楽しんじゃいましょう、というくらいの気持ちで仕事をしています。やっぱり、新しいものができるというのは嬉しいことですから」と話してくださいました。

長年のパートナーとして

ソトーさんと群言堂のものづくりが、これまで途切れずに続いてきた一番の理由。それもきっと、新しいテキスタイルを生み出していくことの “楽しさ” を共に感じられたからなのでしょう。

大量生産が主流になり、生産効率が求められることも多い現代だからこそ、もう一度原点を見つめ直す──人の手で仕事をすることのあたたかさや繊細さ、長年受け継がれてきた技術をこの先の世代へ伝えていくことは、私たちの願いでもあります。

「現代のものづくりでは、間に問屋さんや商社さんをいくつも挟むことが多く、最終的には自分たちが作ったものがどんな製品になって、どんな反応をもらっているのかまったくわからないなんてことばかり。だからこそ、群言堂さんと直接やりとりをしながら一緒にものづくりをさせていただいて、『売れましたよ』みたいなお話を聞くのはやりがいになります。コミュニケーションや関係性のかたちも含めて、当社の、そして尾州の強みにしていけたら」(岩田社長)

岐阜県・三重県を流れる揖斐川(いびがわ)

尾州産地で古くから織物を作り続ける歴史と、長年の経験を持つ信頼できる職人さんたち。そして、楽しみながらものづくりに取り組む姿勢。

群言堂は、そんなソトーさんの確かな技術と心に、心底惚れ込んでいるのです。

いつかは次の世代へバトンを渡すことになっても、ずっと“山登り”のパートナーとして。まだまだ一緒にものづくりを続けていきたいですね。