【スタッフの声】私を支えてくれる、つながりのある石見銀山 大森町の暮らしと仕事

気持ちも時間も余裕なく過ごしていた息子と二人の東京暮らし。
ある時、友人を介して大森町を知り、町での暮らしに魅力を感じて移住してきた吉開琴音さん。

暮らしも仕事も全部が変わることで、一度リセットボタンを押すことができ自身にも、息子にもよい変化が現れていると言います。

地域に開かれた暮らしや仕事が、一人で抱えていた子育ての負担を軽くし、楽しみと共にある人生が再び動き出した━━。

吉開さんが移住ライフでつかみとったものとその過程についてお聞きしました。


石見銀山 群言堂本店
暮らしを一緒に考える店舗スタッフ
吉開琴音さん  

©photo / ハレ

ライフステージの変化が、
働き方を見つめ直すきっかけに

「ホットヨガの経験はなかったのですが、ヨガインストラクターの方々がすごく楽しそうに生き生きと働いていて、自分もこういう大人になれたらいいなって思ったんです。」

大学を卒業した後、新卒で入社したホットヨガのスタジオでインストラクターとして働いていた吉開さん。人と対面で接する仕事がしたかった吉開さんにとって、インストラクターの仕事は性に合っていたようです。ヨガの勉強をしながら、お客様の心や体に良い働きかけができるよう精力的に働いていました。

仕事への向き合い方が変わってきたのは、働きはじめて6年が経った頃。

「入社してから結婚して、出産して、離婚をしました。子供ができて、その子供を一人で育てることになり、自分の楽しさを優先する感じじゃなくなったんですよね。営業時間も長かったので、子育てをしながらだと、周りを頼ったり人一倍頑張ったりしないと長く続けるのが難しい。後輩や周りのインストラクターが、自分より輝いて見えるようにもなっていました。

それに私自身、体力や生活リズムを優先したいと思うようになっていて。自分のモチベーションのエンジンが、かけてもかけてもかからなくなってきた感じがあったんです。楽しそうだと思ってはじめた仕事だから、楽しめなくなってきたのなら無理に続けなくてもいいのかもしれない……。ヨガインストラクターの仕事は約7年半でフェードアウトしました。」


大森町でのびのびライフを送っている友人が輝いて見えた

ヨガインストラクターを辞めてからは、地元のカフェでアルバイトをしながら暮らしていました。大森町や群言堂との出会いは、この時期に訪れます。

「大学時代の友人のトモちゃんが、大森町で楽しそうにのびのびライフを送っているのをインスタグラムで見たんです。海外で働いていたトモちゃんが転職したんだ! 日本に帰ってきたんだ! 大森町ってところにいるんだ!と興味津々。トモちゃんとDMでやりとりをしていく中で、何気なく島根県に旅行に行ってみたいと伝えたら、トモちゃんが大森町においでよって言ってくれたんです。

これまで経済的なこともあり、息子のムギとなかなか旅行に行けませんでした。でも、来年から小学生なので親の都合で休みが取りにくくなる。小学校に上がる前に日本のどこかへムギの誕生日旅行をしようと思っていたタイミングだったんです。出雲大社も縁起がよさそうだから行ってみたいし、トモちゃんもうちに泊まりなよって言ってくれてる。よし、行ってみようと思って。私の妹のトゥルも誘って3人で行くことに決めました。」

学校帰りのムギくんと一緒に
学校帰りのムギくんと一緒に

自然を楽しみ、町の暮らしを満喫する息子の変化に驚いた3日間

そしていよいよ、島根の地を訪れます。島根県どころか、西日本へ来たのははじめてだったという吉開さん。着いたその日は琴ヶ浜のサンセットライブを楽しみました。

「ムギは海を見たことがなかったから、海を見せてあげたいと思いました。でも、潔癖なところがあって、水に濡れると早く拭いて!とイライラするタイプ。海に行ったらどうなるんだろうと思って見ていたら、靴を脱いで浜辺のほうにバァーッと走っていって。それだけじゃなく砂まみれの足でそのまま車に乗って来たんです。

私はもう驚きでした。海は遠くから見るだけだと思っていたんです。足を洗って!って泣くんじゃないかと思っていたんです。今まで見えていなかったムギの一面を知りました。」

旅の間は大森町にあるトモちゃんちに泊まり、町の暮らしを満喫したそうです。一応、出雲大社には行ったそうですが、その記憶が掠れてしまうほど。大森町のパン屋さんやライブラリーなどを散歩してまわり、濃厚で楽しい3日間を過ごしました。

「トモちゃんちが2階から屋根に降りられる構造だったんです。夜になるとオレンジの石州瓦の上に寝っ転がって、星空を見上げて。ムギは高い所が怖いタイプだと思っていたのに、すっかりお気に入りスポットになっていました。

ムギの誕生日旅行だったからトモちゃんが地元の子供たちを集めてくれて、トモちゃんちでわいわいご飯を食べたりして。東京ではこんな風にご飯を食べた経験がなかったので、ムギはとても楽しかったみたいです。」

吉開さんを大森町へ導いたトモちゃんは、実は群言堂の社員。群言堂本店へ買い物にも行ったそうです。

「お店に入って、沼津のおばあちゃんちに似ていて好きだなぁって思いました。私のおばあちゃんはおしゃれで、着なくなった着物をバッグにリメイクしたり、部屋にお花を飾ったりするのが好き。古い家なんですが、おばあちゃんちはいつ行ってもきれいなんです。ちょっとおこがましいですが、トミさんとおばあちゃんを重ね合わせていました。」

自然がすぐそこにある大森町で伸び伸びと育っているムギくん

移住のためのやることリストを作って動き出す

島根の旅から東京へ戻ったのが2024年9月。そこから約半年間、吉開さんの心は大きく揺れていました。大森町でのびのびと暮らしてみたい。移住ライフもなくはないんじゃないか。でも、東京での生活に慣れたムギは無理だよね。アルバイトとはいえ仕事も簡単には辞められないよね。そんな風に迷いながらいたそうです。

「迷っているだけでは何も変わらないと思い、移住のための“やることリスト”を作りました。一つずつクリアできたら、自分の意思でこの町に来ようと決めたんです。

できなければそのまま東京で暮らせばいい。それで、トモちゃんに大森町で仕事や暮らす家を探してほしいとお願いしたんです。

でも、そうやってトモちゃんにお願いしたけれど、一時期は本当に移住したいのかわからなくなって。大森町の暮らしを知ってしまったからこんなにしんどい気持ちになるんだ。知らなければよかったと周囲にこぼしたこともありました。」

それでも一つひとつリストをクリアしていきます。懸念していたムギくんは、大森町で楽しい体験をしていたので問題がなさそう。東京でのアルバイト先も気持ちよく送り出してくれそう。最後は、「移住を決めたのは自分だ」と腹をくくりました。

「仕事の内容よりも、この町で暮らすと決めた自分の選択を大切にしたいと思っていました。そしたらトモちゃんが、群言堂は琴音に向いてると思う、おすすめできるよと言ってくれて、面接の日程まで組んでくれました。」


「服はたくさんいらない」のままでいいと、私自身を受容してくれた

面接のために再び大森町を訪れた吉開さん。面接後に人事担当の社員と交わしたやりとりが印象に残ったと言います。

「私はあまり服は買わないし、数枚の服を大事に長く着回したいタイプだから、服を販売する仕事は向いてないんじゃないかと本音を話したんです。そうしたら人事の方が、『そういう方にこそ群言堂の服を選んでほしい』のだと。『こだわって作った1着を選びたい人や、服はたくさんいらないけど、群言堂の服は買いたいという人がこの会社には集まっているし、お客様もそう。吉開さんの今の考え方のままで群言堂を好きになってもらえたらうれしいです』と話してくれたんです。」

自身の考え方が受容されたやりとり。この時に自分と群言堂が重なる部分を感じることができたと吉開さんは言います。

面接は無事に通り、2025年3月に移住。大森町でムギくんと二人の生活が始まりました。群言堂に入社したのは2025年4月。物流部門で3カ月間働いた後、カフェ業務を経て、今年1月からエリア1(アパレル販売)に配属されました。各部署で段階的にスキルを身につけ、「もっと知りたいことがある」として継続的な学習意欲を示しています。

一緒に働く仲間たちと

東京では感じたことのない温かさ。
一人親でも安心できる助け合いのある生活

群言堂で働いてみた感想を聞きました。

「人が温かいんです。つい昨日のことなんですが、私が発熱してしまって。ムギに買い物に行ってもらった時に、由紀子さん(株式会社石見銀山生活文化研究所 代表取締役社長)が、『ムギくん見つけたよ。このまま拾ってもいい? ご飯食べさせておくから寝ててね』って電話をくれたんです。東京に居た頃は、私が熱を出すとムギと家の中で2人、何とか乗り切るしかなかった。

親にもされたことがないような温かい対応。群言堂のみなさんは当たり前のようにこういうことをしてくれるんです。最初の頃は少し抵抗があって、移住してきたばかりだからみんな親切なのかなって思ってたんです。でも1年近く過ごしてみて、どうやらそうじゃなさそう。由紀子さんだけじゃなく、先輩や同僚もみんな温かいです。」


移住による最大の変化は「リセットボタンを押せたこと」

大森町に移住して、ムギくんとの生活に何か変化はあったのでしょうか?

「東京での暮らしは、余裕がなくて必死でした。一人で子供を育てていくのは大変で、その大変さがムギにも態度に出てしまっていたと思います。余裕がなくてあんまり構ってあげることもできなかった。

移住して、暮らしも仕事も全部変えることになって、1回リセットボタンを押すことができました。もう1回ここでムギとやり直そうって思えたんです。」

悩みながらも移住を決めたことで得られたポジティブな変化。

「今、ムギは友達と遊んだり、神楽に興味を持ったりして意識が外に向くようになりました。2人でずっと向き合わなくてもよくなったし、私がやらなきゃいけないと思っていたことを、海などの自然や友達が相手をしてくれるようになりました。環境がガラッと変わったことで子育ての負担がだいぶ軽くなった感じがあります。

学校もよかったです。生徒数が東京よりも少ないので、先生のサポートが手厚い。子供のことをよく見てくれてるし、だめなことをするとちゃんと叱ってくれるんです。これまでムギはあまり叱られてこなかったけど、悪いことをすると、大人はちゃんと見てるんだってことがわかってきたと思います。

逆にめちゃくちゃ褒めてもくれるんです。東京に居た時、私は褒めそびれてしまったことがたくさんあるから、ムギはとてもうれしいんじゃないかな。先生が一人の生徒を見る時間が長い教育環境は、東京でどれだけお金を出しても得られなかったと思ってます。」

大森町で見た初めての雪に大喜び

「移住して、暮らしも仕事も全部変えることになって、1回リセットボタンを押すことができました。もう一度ここから始めようと思えたんです。」

迷いがなかったわけではありません。それでも、やることリストを作り、一つずつ自分で確かめ、最後は「ここで暮らす」と決めたのは吉開さん自身でした。

大森に来たのは、誰かに背中を押されたからではなく、自分で選び、自分で動いたから。

今、群言堂で働く彼女は、お客様と向き合う時間も、仲間とのやりとりも、町での暮らしも、どこか軽やかです。服をたくさん売ることよりも、本当に好きな一着を届けたい。そんな思いを、無理なく言葉にできるようになりました。

子育ても、仕事も、全部を一人で抱えなくていい。でも、選ぶのは自分。

そうやって積み重ねた毎日の中で、吉開さんは今、大森という場所で、生き生きと暮らし、働いています。


* * *

吉開さんのように、自分の暮らしや価値観を大切にしながら働きたい方に、合う仕事だと思います。

自分の人生を、もう一度、自分の手で選び直したい人へ。
大森には、その余白があります。

■募集職種
暮らしを一緒に考える店舗スタッフ

■職種説明
この仕事は、お客様の話に耳を傾け、暮らしの背景や価値観を理解しながら、その人に合った心地よさを一緒に見つけていく役割です。

「何を売るか」ではなく、
「どんな暮らしを大切にしたいか」を一緒に考える仕事です。

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