『森山淑美』の場合|三浦類の職場放浪記

群言堂カフェ担当
もよさんこと
森山淑美(もりやま・よしみ)さん

この記事は、2022年10月に公開されたものです。


大社生まれ大社育ち

もよさんは出雲市大社町で生まれ育ち、幼稚園から小・中・高とずっと「大社」と名のつく地元の学校に通った生粋の大社っ子。

双子の弟と6歳下の妹、両親と祖父母とともに当たり前に神様が身近にいるスピリチュアルな環境で過ごした。

県内有数の観光地として常に評価を受けて賑わいのある地域ではあったが、小さい頃はなんとも思っていなかった。

そればかりかむしろ田舎暮らしが嫌で、高校を卒業したら絶対に県外に出ようと心に決めているほどだった。

そして晴れて岡山県の服飾系短大に進学したが、卒業後の進路が決まらず結局島根に帰ることに。失意の帰郷から1年間、出雲の職業訓練校でデザインを学んだ。

地元の魅力との出合い

ほどなくして、出雲市の西隣、大田市にあった地産地消カフェで縁あって働き始めた。

本音を言えば不本意な形で地元に戻ってきたが、接客の仕事は思いの外楽しく、島根にあるたくさんの美味しいものと出合うこともできた。

出合った食材を使った料理も楽しめるようになり、いつしか嫌いだとばかり思っていた田舎は好奇心の対象になっていた。

ある時出雲市の山奥、立久恵に暮らす友人たちとルームシェアを始め、そのメンバーで3人組ユニット「里山シスターズ」を結成。

野草の天ぷらを振る舞ったり山でピクニックを企画したりといった楽しい活動を続けるうちに、島根の土地と食への愛は深まっていった。


里山シスターズのイベント開催時

大森町へ

里山シスターズの活動が一区切りついた頃、実家近くで一人暮らしを始めた。

出雲大社近くのカフェでしばらく働いたが、ちょうど平成の大遷宮直後で人出が多く、ただ流れ作業のように仕事をこなし忙殺される日々に疲れてしまった。

その折に見たのが群言堂の求人記事だった。

「里山」という言葉を使っているところにシンパシーを感じ、応募することに。

2017年4月、入社が決まり群言堂本店のカフェで働き始めた。翌月には大森町に引っ越し、借家の古民家での新生活もスタート。近所の方がとても良くしてくれて、保守的な地元とのギャップに驚いた。

仕事の充実

飲食店での経験を買われて最初からメニュー考案などを任され、町の素敵な環境の中でのびのびと自由に働けることがとても楽しかった。

2019 年、夏限定のパフェを任されてメニュー開発したのが好評だったため、年間を通して季節のパフェを提供することになった。

実は試作段階では何度も泣きながら作ったものだったのでとても嬉しかった。

現在は2ヶ月に一度新作を開発している。地元の旬のもの、顔の分かる生産者のものを軸にメインの食材を選び、食べ合わせを重視して様々な食材と組み合わせている。

昔からレシピ本を読んだり外食したり、また旅先で新たな食に出合ったりするのが趣味と言っていいほど好きである。それらが現在の食へのこだわりの元になっている。

コロナ休業中には趣味にも制限がかかったが、自宅で新たな料理に挑戦するなど仕事の幅を広げる機会にもなった。

仕事以外でも良縁が

縁結びの地で生まれ育ったこともあり、幼い頃からご縁の存在を信じ、常に人への感謝を忘れないよう生きてきた。

そのおかげか、つい最近良縁に恵まれた。AI の導きにより石器づくりとキノコ狩りが好きな変人と出会い、1年間の交際の末に今年6月入籍したのである。

夫も大森町に移住し、新婚生活は始まったばかり。出会ったころ「こんなに変な人だったら一緒にいて退屈しなさそう」と感じた通り、今は毎日が楽しくて仕方がない。

一方で、コロナ禍でお客様と出会う機会はずいぶん減ってしまった。この状況が落ち着いた先には、リアルな食のイベントをもっと大森でやりたいと思っている。

人をお迎えして美味しいものを食べてもらい、心華やぐ時間を過ごしてもらいたい。今は食を通してご縁を紡ぐための準備の最中である。

人見知りの接客好き

今でこそ接客が好きだが、もともと自分に自信が持てず、人と話すことも好きだと思えなかった。

食への興味をきっかけに自分とは最も縁遠いと思っていた接客の世界に入ったが、やはり最初にぶち当たったのは自己肯定感の低さという壁だった。

やっとのことで25歳くらいから、克服のためにあえて人前に出ることを意識し始めた。

接客はステージのようなもので、自分のいいところを抽出して人前で演じるトレーニングだと自分に言い聞かせる。

それが結果として自分を認めてあげることにつながり、最近になって本当に楽しさを見出せるようになってきた。

現在、カフェの責任者として仕事を任され、若いスタッフも増えてきた。仕事を楽しみ、自分を見つめ直せるようになった先には、ちゃんと人にものを教え、育て、守れる存在になりたいという新たな目標に向かって歩んでいる。

書き手:三浦類

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