『大塚かおり』の場合|三浦類の職場放浪記

群言堂の店舗ではたらく
大塚かおり(おおつか・かおり)さん

この記事は、2019年9月に公開されたものです。


海苔御殿に生まれて

大塚かおりは千葉県船橋市の港町で生まれ、7つ年上の兄とともに活発に育った。おじいちゃん子で、海苔やアサリをとる漁師をしていた祖父が大好きだった。

家は海苔で建てた「海苔御殿」。

母の小さいころには家の隣に養豚場があり、豚が海苔を食べにやってきたという。

学生時代

市川市にある女子校を卒業後、文化女子大学(現・文化学園)造形学部生活造形学科に入学した。

やったことのないことをやりたいと、彫金、木工、素描、基礎造形、なぜか心理学や生理学、六法までなんでも興味の赴くままに学んだ。

3年からは「グラフィック・プロダクトデザインコース」へ進み、時にパソコンをカタカタし、時にペンキやアクリル板などで立体製作物を作る日々を過ごすように。

材料費を買うため無印良品でアルバイトをしつつ、休みの日には課題に追われる毎日だった。

疲れ果てて、やっとの思いで完成した課題を中央線の棚に忘れてしまったことも……。大変だったが、最高の先生と仲間に出会えた学生時代だった。

カニとかイクラとか

卒業後は生活雑貨などのショップを全国展開する会社(イオングループ子会社)に勤めた。

入社半年、配属先の赤羽の店舗に慣れたころ、「大塚はカニとかイクラとか、好きか?」フラリとやって来た事業部長に唐突に聞かれた。

無邪気に「好きです!」と答えた数週間後、全国で一番売り上げのある北海道・旭川店の店長として異動することに。

「一年で関東に戻してやる」と言った事業部長はその後すぐマレーシアに飛ばされたらしく、気がつけば約2年が経っていた。

はじめての一人暮らし、はじめてのマイナス22度の世界を知り非常にメンタルが強くなった。

関東への帰還

北海道生活は限界だと再三会社に訴えて、ようやく関東へ帰還した。

今度は新横浜店の立ち上げを担当し、ものづくりのワークショップ企画や販促物製作など、学生時代の経験も生かしながらこなした。

しかし取り扱い商品が価格・売上重視に切り替わって質が落ちるようになり、何のために働いているのかが分からなくなってしまった。

お客様に誠実でない気がして次第に辛くなり、退職を決意した。

新天地、鎌倉へ

2010 年、横浜から好きな街、鎌倉へ引っ越して自分が心からやりたい仕事を探しはじめた。いい出会いがあり鎌倉の人気食堂「コバカバ」で働くことになった。

つくっているものが明確で、すべて手づくりだったので今度は自信をもってお客様と向き合うことができた。

飲食は未経験だったものの、明るい先輩方にホール・キッチン・献立づくり・発注まで仕事を仕込まれ、いつしか右手にフライパン、左手に中華鍋を持ち、足元でオーブンを操作するなどマルチタスクをこなせるほどになった。

オーナーの築くコミュニティは面白く、器界で有名な祥見知生さんの紹介で高知の器作家・小野哲平さんや布作家・早川ユミさんのお家にお邪魔し宴会をしたり、夜にライブをしたり、常連さんやご近所さんを巻き込んだハロウィン仮装パーティをしたり、7年間たくさんのご縁をいただきながら働いた。

大好きな職場だったが、途中でオーナーと方向性の違いを感じて退職を決めた。

そして群言堂へ

群言堂に入社したのは2017年8月。

もともと素敵なお店だなと思っていた群言堂の求人を見つけ、理念に感銘を受けて履歴書を送った。

無事湘南T-SITE 店(現在は閉店)に採用され、1年1ヶ月勤めたのち、コレド室町3店に移った。5年目になった現在、副店長としてのびのびと仕事を楽しんでいる(2026年現在は、KITTE 丸の内店に勤務)。

負けず嫌い

何かできないことがあると悔しくて、できるまでなんとかやろうとする。

接客中にお客様からの質問に答えられないときなどは特に悔しいので、商品知識や背景など下調べは怠らない。

そんな性格もあって、ものを売ることがとても楽しい。商品の背景をただ説明するのではなく、お客様に寄り添い興味を持ってもらうプレゼンの仕方を常に考えている。

コロナ禍の変化

現在店舗は時短と少ないスタッフでいろいろと制限がある中での営業だが、お客様も大変な中、よく「がんばってね」「なくならないでね」と直接のほかお手紙やお電話などでも温かい励ましをいただく。

より一層、お客様にとっての癒しや喜びにつながる接客やお店づくりをしたいという気持ちが高まっている。

お客様は出かける機会が減った結果、服の好みが変わる方が多くなった。

明るい服が好きになったり、体型が変化し選ぶ服の形が変わったり、コロナによって様々な変化がもたらされていることを実感する。

他の方のために買うという方も増えた。離れた家族や友人など、誰かを思う機会が増えているのかもしれない。

これから

プライベートではオンラインの友達が増えた。

8才のインコ、ぴのを飼っているので鳥界隈のSNS を通じて人と知り合ったり、昨年6月から新しくはじめた趣味のギターでオンラインセッションをしたり、コロナ禍だからこそつながった新たな出会いがいくつもある。

孤独を感じやすこの時代に起きた変化をポジティブな方向に向け、自分や周りを元気付けられる生き方をしていきたい。

インコのぴのと共に新たな趣味を楽しんでいる

書き手:三浦類

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