育つほどに愛着の増す、もみほぐし麻【滋賀県・滋賀麻工業株式会社】|ものづくりの仲間たち

はじめに

※本記事は2018年に公開したものを2026年に再編集したものです。


群言堂の夏の定番、「もみほぐし麻」。

私たちは、滋賀麻工業株式会社(以下、滋賀麻さん)のこの生地に惚れ込み、毎年作り続けてきました。
ありがたいことに、毎年夏になると、スタッフが長年愛用しているもみほぐし麻のブラウスやワンピースを「素敵ですね」と言ってくださるお客様がいらっしゃいます。

2018年春、群言堂スタッフは滋賀麻さんを訪問し、社長の山田清和さんと、父であり会長の山田清史さんにお話を伺いました。

手をかけてでも、着て楽しく、ワクワクできる服を作りたいー。

そんな滋賀麻さんと群言堂の想いがめいっぱい詰まったもみほぐし麻は、着続けるほど愛着の増す服です。あなたも着てお試しになりませんか。

終戦の1年前に創業しました

左から、社長の山田清和さん、会長の山田清史さん

日本で最も大きな湖、琵琶湖。
その東岸にある滋賀県の〝湖東地域〟は高い湿度と水に恵まれ、古くは室町時代より麻織物の特産地。
清和さんの祖父・清吉さんは、終戦1年前の昭和19年にこの地で滋賀麻工業株式会社を設立しました。

優先的に原糸が配給される工場で兵隊の服やカバンを作って国におさめる、軍事品の指定工場としてのものづくりが出発点。
それから現在に至るまで「織り」を軸に営み続けてきたのです。

「麻」を大切に、時代の変化とともに

これまでの群言堂の生地が大切に保管されていました

農家の多い湖東地域は、11月から3月までは農閑期にあたります。そこで滋賀麻さんは、各家庭に機織り機を持っていき、内職をお願いしていました。

「当時は、みんなお着物やった。裾まである和服を仕立てるための生地を、内職として各家庭に手織りで織っていただきました。まあほんでね、雪が降ると農作業ができんので、作業の進みが早まった。自動車なんてないもんで、リヤカーに織った生地を積んでね。湖東地域は本当に機屋(はたや)さんが多かったんです。今は数えるほどしか残っていませんけれど、和装からはじまり、洋装に変わってきたという歴史があります」(会長)

当時の様子をお話くださる会長

オリジナルを提案する精神

2015年に、父・清史さんから社長のバトンを引き継いだ清和さん。
三代続く滋賀麻さんが大切にしているものづくりの指針は、〝前例を越えていく〟こと。

「つねに新しいオリジナルを提案していく。その積み重ねがうちの強みです。だから商品の8割は、スタッフが考えて作ったもの。続いてきたものづくりの精神を、絶対に引き継いでいかなあかん」(山田社長)

滋賀麻さんとの出会い

滋賀麻さんとのお付き合いのはじまりは、長年、群言堂のテキスタイルデザインに携わる折井(2026年現在は、群言堂を引退しています)がきっかけ。「前職時代から、近江の伝統織物である〝もみほぐし麻〟の涼やかな着心地や上品なツヤ感、それでいてやさしい肌触りに惚れ込んでいました」。

そんな彼女の片想いから滋賀麻さんを訪ねたのは、14年前のこと。以降現在に至るまで、もみほぐし麻を活かしたワンピースやブラウスを共に作りあげてきました。

滋賀麻さんの一番のファンだと思ってるの

写真左から、社長の山田清和さん、群言堂の折井

折井 
初めてお会いしたのは14年前ですね。

山田清和社長(以下、山田さん) 
毎年わざわざ来ていただいてありがとうございます。

折井 
私は滋賀麻さんの一番のファンだと思ってるの。私自身が毎年、もみほぐし麻の新しい服を着たい。お客様もきっとね、そういうふうに期待してくださってると思うの。「今年のもみほぐしはなにかしら?」って。だから「来年のもみほぐし麻はどうつくろう?」ってね、滋賀麻さんといつも一緒に悩んできて。

山田さん 
そうですね。折井さんは現場の工程やサンプルから原石を見つけだすのがすごく上手やなぁと思っています。

折井 
こうして伺うと、過去の資料からなにから、いろんなものを見せてくださる。だから現場に来てイメージを膨らませたり、大きなヒントをいただいたりしています。「これはこういうふうにできますか?」だとか、技術に関する「できる」「できない」もその場で確認できますし。

山田さん 
毎年本気で顔を突き合わせてきたから、折井さんはお客さんというよりも、お姉さんのような感覚です。失礼な言い方ですけれども(笑)。

折井 
いや、お母さんでしょう(笑)。

山田さん 
そんな感覚で、気軽と言うたら怒られますけど、なんでも対等に言い合える関係です。お互いにね、「こうしてほしい」「これはできません」とか、言うこともありますよね。

折井 
たとえばこの生地は、単調なストライプ柄ではないので、仕上げるには経糸の成形をその都度変えなきゃならない。ものすごく手間がかかるんですよね。

山田さん 
こういう生地は本来ジャガード織りができるような特殊な織機でないと織れませんけども、そういう織機で織ってしまうと、今度はもみほぐし麻の規格から外れてしまう。じゃあ一般的な織機でこれをどう実現しようかと、打ち手を考えて試し尽くすわけです。

折井 
私たちが滋賀麻さんにお願いしていることは、職人さんほど機械のことをわかっていないから言えることでもあるんですよね。私たちの要望の中には、職人さんにとって「こんなお願いをされてもむずかしい」っていうこともあるはずで、滋賀麻さんは断るという選択肢もあると思う。でも、いつもなんとか実現しようと試行錯誤してくれる。

会長 
ほんま、この仕事は手間がいるんです。経糸を通し変えるのが大変なのや。それを間違うと、うまいこと配列がいかへんから。

滋賀麻工業(株) 会長の山田清史さん

折井 
だからこそ生地が織りあがってきた時はね、うわぁって。本当に嬉しいですよ。

山田さん 
手を使い頭を悩ませただけ生地に変化があるし、デザインの幅も広がりますよね。

本来の上質感を損なわないままに

折井 
年を重ねるごとに滋賀麻さんとのやりとりが徐々に深くなって、おかげさまでこだわり抜いたものを作れるようになりました。

山田さん 
それは群言堂さんのものづくりに対して共感しているからです。
しかも、私らが想像できない企画をされるので。
よく〝車のフルモデルチェンジは誰だってできる〟と言います。
まったく新しく作り変えるよりも、素材やデザインが本来持っている良さを継ぎながら新しく創っていくほうがむずかしい。
「もみほぐし麻」はフルモデルチェンジよりもマイナーチェンジでなければならないと思うんです。

折井 
そうね、新しいものを作りたいけれども、このもみほぐし麻の良さから大きくかけ離れた新しさを追求したいわけじゃない。本来の上質感を損なわないままの、グレードアップさせた服を作りたいですね。

山田さん 
そういうこだわりをお持ちだから、私らが「これでええんちゃうかなぁ」と思っても、なかなか商品の出来に納得されない(笑)。
いま制作中のもみほぐし麻も、じつはサンプルを4回作り直したんですけど、「もっと良くできる」って仰る。
4回も作ってくれてんやったら、しゃあないこれでいったろかっていうのは……。

折井 
ない、ない(笑)。

山田さん 
絶対に「うん」と言いませんもん(笑)。
ついこの間も、とにかく凝った柄の企画をいただいて、私は「できません」とお答えすることもあるんですけど、職人さんに相談したら「群言堂さんの仕事やったらしゃあないな」と。
長くお付き合いしてお互いに信頼しあえているので、職人さんにがんばっていただけたのかなと思います。

折井 
本当に有難いことです。常識的な機械の使い方だけでものをつくろうと思ったらね、それしかできないじゃない? だから機械の扱い方にとらわれずに、「こういうデザインはできないかしら?」って、相談させてもらうの。

山田さん 
それだけ群言堂さんの、いい加減なものをお客さまにお出しできないというプライドを感じるので、僕らも本気で応えたいという想いがありますよ。

素材の良さを引き出しています

年を重ねるごとに滋賀麻さんとのやりとりが徐々に深くなって、おかげさまでこだわり抜いたものを作れるようになりました。

商品開発のために、5回以上試作を重ねることも茶飯事。
滋賀麻さん独自の技術と試行錯誤によって、繊細な糸を織り上げ、もみほぐし麻の〝しわ〟の風合いをつくっています。

一番思い入れが深かったのは、2004年に作った最初のもみほぐし麻。今でも愛用している折井のブラウス。

在職人の手と織機によって再現されている、近江のちぢみ加工。
専門性の高い織機は、スイッチを押したら誰でも使えるわけではなく、熟練の職人にしか使いこなせないもの。

生地の「仕上げ」といっても一般的な生地とは異なり、職人さんの絶妙な加減が必要な工程です。せっかく生まれた「もみほぐし」の味わいやシボ感を残しつつ、生地にやさしく慎重に仕上げられています。
強く引っ張らず、シボ感を残しつつ生地幅を整えていきます。ゆっくり低速で生地に負荷をかけずに行うため、時間と手間がかかりますが、もみほぐし麻の風合いを最後まで残す大事な工程です。

幾種もの機械を組み合わせ、細やかに手を入れることで、素材の良さを引き出します。
柔らかな手触りとゆるやかな立体感を表現できる生地は、こうして織りなされるのです。

10年以上着込んだブラウスと、元の生地を触り比べることができました。
「13年間洗って着込んだら、こんなに柔らかくなりましたの。これがもみほぐし麻の生地なんですよ」(折井)

着込んでいくと、衰えるどころか上品に育っていく

熟練の技術と細やかな心遣いで紡がれるもみほぐし麻の〝シボ感〟は、肌触りに独特の味わいを生みます。

「もみほぐし麻は普通の平らな生地と違って、細かな凹凸があります。これを私たちはシボ感と呼んでいます。肌に触れる接点が少ないですから、空気の流れる層ができるんですよ」(山田さん)

そんなもみほぐし麻は、春にはじまり、蒸し暑い日本の夏に着たくなる服。

「ほんとにね、風が通り抜ける感じがして、涼しいの。肌触りも気持ちいいんです」(折井)

折井の毎年の楽しみは、ちぢみのタンクトップの上に、もみほぐし麻のブラウスを着ることだとか。

「旅行に行く時にいつも着て行きます。ホテルで洗って、タオルで挟んでトントンと水気を取った後干しておいたら、朝にはまた着られるのよ」(折井)と話すように、もみほぐし麻は〝乾きの良さ〟も特徴です。

普段使いにおいても、洗ったら全体を手で整えて干すだけで、アイロンも衿だけ軽くかけるくらいでOK。
おなじ服でも付き合い方次第で、年月を重ねて風合いが変化していきます。
「その人オリジナルの風合いが育ってくるのが、もみほぐしの麻を着る楽しさなんです」(山田さん)

「着込んでいくと、衰えるどころかツヤが生まれ、生地が上品に育っていくもみほぐし麻。だから、何年も大事に着ようって思えるの」(折井)

手をかけてでも、着て嬉しく、ワクワクできる服を作りたい─。
そんな滋賀麻さんと群言堂の想いがめいっぱい詰まったもみほぐし麻は、着続けるほど愛着の増す服。
この夏、あなたも着てみませんか。ぜひ一度、触れに来てくださいね。

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