【スタッフの声】「伝わる」の先に、美しい循環がある。言葉の世界を飛び出し、暮らしの中で見つけた私の「ものさし」

「自分の心がいいと言っている感覚を、見失わないように生きたい」

そう穏やかに語るのは、店長として店頭に立ちながら、群言堂が掲げる「未来に遺したい暮らしの在り方」を体現し続けている樽川美穂さんです。

かつてFMラジオのパーソナリティとして、マイクの前で「言葉」を届けていた樽川さん。そんな彼女がなぜ、横浜から遠く離れた島根県大森町へ移住し、アパレルや生活雑貨を扱う群言堂の世界に身を投じたのでしょうか。

そこには、言葉だけでは埋められない実感を求め葛藤した日々と、少数派だと思っていた自分の感性の居場所を見つけつつも、日々答え合わせをしながら、群言堂の伝え手として歩みを進める姿がありました。

入社から約7年、現在は店長として、誠実な「循環」を大切にする樽川さんの物語をお届けします。

そごう千葉店 店長
樽川美穂さん

「言葉」の世界で募った違和感

群言堂に入社する前、樽川さんは二つの仕事を並行して行っていました。

一つはFMラジオのパーソナリティ。週に一度、自分の番組を持つ、「言葉」のプロとしての仕事です。もう一つは、伝統工芸の職人さんの跡継ぎたちが御徒町に作った、販売店での仕事でした。

「ラジオのお仕事は、パーソナリティの人間性や日々考えていることが、そのまま番組に出るんです。自分の人柄がすべて音声に乗ってしまう。だからこそ、どうすれば伝えようとすることが伝わっていくのか、何をインプットし、どうアウトプットすべきかを、考え続ける毎日でした。」

しかし、その日々に少しずつ「違和感」が募っていきました。

「パーソナリティは、自分自身が動いて何かを作るわけではありません。音声のみで伝える仕事です。アウトプット過多になっている感覚がありました。自分が実際に動いて経験し、その実感の中からしっかりと言葉にして伝えていきたい。ただ『伝える』のではなく、相手に『伝わる』仕事をしたい。そう強く思うようになったんです。」

そんな時、もう一つの仕事場であった伝統工芸の店で、あるお客様のつぶやきが耳に入りました。それが「群言堂」という言葉でした。

「『群言堂』ってなんだろう、と気になって調べてみました。すると、島根県の石見銀山に拠点があるライフスタイルブランドだとわかり、まずは本を読んでみようと、松場登美さんの著書『群言堂の根のある暮らし: しあわせな田舎石見銀山から』を手に取ったんです。」

石見銀山にある他郷阿部家にて

「少数派」だった自分の感性の居場所を見つけたよろこび

実は樽川さんは、それ以前にも豪雪地帯の山形県小国町で「緑のふるさと協力隊」として1年間暮らした経験がありました。 地元である横浜に帰ってからも、「いつかまた田舎で暮らしたい」という思いを抱えながら、味噌を手作りしたり、オーガニックコットンの畑に通ったりと、自分らしい暮らしを模索し続けていました。

「昔から少数派だと感じることが多かったんです。20代の頃に『田舎に住みたい』と言っていたのもそうだし、物があふれている時代に、捨てないでもう少し使いたいとか、古い布は素敵だよねとか言っていて……そんな自分の感覚を共有できる人はあまりいなくて、どこか寂しさやもどかしさを抱えていました。」

そんな時、創業者である松場登美の本に出会いました。

「本の中に書かれていた感覚が、自分とあまりにも一致していたんです。『そうだよね、捨てられるものを生かしきるっていいよね』と心から共鳴しました。群言堂に入れば、自分の感性の居場所があるんじゃないか。そう思いました。」

それから約3年後。横浜に帰ってきてから5年ほどが経ち、「そろそろ、また田舎で暮らしたい」という思いが日増しに強くなっていたある日、SNSで偶然、群言堂の求人記事が流れてきました。

募集していたのは、石見銀山にある宿「他郷阿部家」のスタッフ。かつて本を読んで憧れたその町で、実際に「暮らす」チャンスが訪れたのです。

樽川さんを応募へと突き動かしたのは、『群言堂で働く人』への素直な好奇心だったといいます。

「求人だから仕事のことなのに、『暮らしに行ってみよう』という感覚でした。田舎への入り方はいろいろとありますが、私は緑のふるさと協力隊での経験から、地域の会社の一員として入る形が、当時の自分には合っていると感じたんです。」

他郷阿部家での日々

家と会話する日々、他郷阿部家で学んだこと

2019年に入社し、最初の1年間は「他郷阿部家」のスタッフとして働きました。そこで樽川さんが経験したのは、古い建物と空間との対話でした。

「阿部家での日々で一番心に残っているのは、『家と会話する』という感覚です。古い家には、昔の人の暮らしの息づかいが随所に残っています。例えば、備え付けの箪笥の引き手を握った時、かつてここに住み、同じように引き手をにぎった阿部さんと手が重なる感覚があったんです。あぁ、大切にされてきた家なんだなと思い、自分の中にある『大切』もあふれてきました」

おそらく江戸時代に庭に植えられたギンモクセイの木にも、物語がありました。

「消臭剤や芳香剤がなかった時代、においをカモフラージュするために、当時は厠(かわや)と呼ばれていたお手洗いの近くにギンモクセイを植える家庭もあったそうです。今よりも物がなかった時代の人の暮らしの知恵ですよね。100年、200年前の人の暮らしの跡が今もそこにあって、自分もその流れの中にいる。そんなことを感じていました。」

他郷阿部家での1年を経験し、その後は東京のKITTE 丸の内店やRe:gendo(現・西荻窪 暮らしの研究室)を経て、現在のそごう千葉店で勤務することになります。場所は変わっても、石見銀山で培った感覚は、樽川さんの中に静かに、力強く根付いていきました。

店舗で勤務中の樽川さん

「文化51% 経済49%」。誠実な循環を店長として育みつなぐ

現在は店長として店頭に立つ樽川さん。接客において、彼女が大切にしている「ものさし」があります。

「私は群言堂の、『文化51% 経済49%』という考え方が好きなんです。ビジネスでありながら文化を大切にする、このバランスを意識しています。もちろん売上は大切ですが、その前に、大切にしたい文化がある。その土地で先人が積み重ねてきた暮らしの文化、その中で必然的に栄えたものづくりの歴史。人間だけではなく、土、風、植物、動物と時間をかけて一緒につくってきた日本の文化が愛おしくて、大切にしていきたいんです。」

その信念は、お客様との接客スタイルにも現れています。

「単に売上を上げるために、たくさんおすすめすることはありません。必要な人に、必要な分だけを販売する。余計な買い物はさせたくないんです。

接客では、お客様自身が落ち着いて考えられるように、時間や雰囲気づくりを大切にしていて。『お似合いですよ』などと何度もお客様に言葉をかけるのではなく、あえて、沈黙の時間をつくることもあるんです。非日常のお店の空間だからこそ、いったん落ち着いてご自身の日常を思い出してもらう。そしてお客様自らが『これが私に合う』と答えを出せるようにしたいんです。お客様は、服を選びに来ているように見えて、衣服を通して生き方を選びに来ている、そう感じることさえあります。」

表面的な言葉ではなく、素材の力や、その方の体質に合うかどうかを正直に伝える。そうした嘘のない言葉がお客様に届き、「美しい循環」を生んでいるのかもしれないと樽川さんは言います。

「百貨店全体がセール時期でも、群言堂はプロパー(定価)での販売を続けることが多々あります。それはまず、作り手の正直な仕事があり、その土地の風土や気候から生まれたものが、誠実なプロセスを経て店頭に届くという出発点があるから。私たちはそれを受け取り、背景などを理解した上で、作り手の想いと一緒にお客様へお渡しする。この一連の流れが不自然じゃない状態で巡り巡っていることこそが、群言堂らしい美しい循環だと思います。こうした嘘のない誠実な流れがしっかりお客様に伝われば、自然と経済は回っていくのだと実感しています。」

他郷阿部家の象徴である台所「おくどさん」

自分の心を信じられるようになり、生きやすくなった

群言堂での7年間は、樽川さん自身の内側を大きく変えました。

「以前は、周りを気にして合わせたり、少数派であることに不安を感じたりしていました。でも今は、自分の心が『いい』と言っている感覚を好きだと思えるようになりました。自分の生き方を、自分の心に聞きながら選び取れるようになったんです。本当に生きやすくなって、うれしい変化でした。」

例えば、他郷阿部家で働いていた時のように、お店の中を雑巾で丁寧に拭き掃除すると、目には見えないけれど空気が整ってくる。気持ちがいいところには人が集まるから、お客様もたくさん来てくれる。その感覚を共有できる仲間もいる。

「『心配しないで大丈夫』と思えるようになりました。内側の変化なので外からは見えにくいかもしれませんが、私にとってはとても大きなことです。」

季節を感じながら働く日々
西荻窪店でも作っていた干し柿。
樽川さんは干し柿のことを「うまくいくことは、誰か(なにか)のおかげさまで成り立っていることを教えてくれる存在」と話してくれました。

アパレルという枠を超えて、未来に遺したい「暮らしの在り方」を伝える

日々店頭で、作り手の目に見えない工夫や誠実な仕事を伝え続ける。それが、群言堂というブランドの歴史となり、文化として蓄積されていく。

「一人でできることには限界があります。でも、群言堂という大きな営みの中で行動することで、私ひとりの人生の時間を超えて、大切にしたい暮らし方が、『概念』として少なからず遺っていくと思うんです。」

樽川さんは今、そんな期待を持って働いています。

「アパレルという枠を超え、一つの『生き様』を提示するブランドとして、生き方に迷う後世の人たちにとって、『こういう生き方もあるんだ』と安心して選べる選択肢の一つになってほしいと願っています。」

ラジオのマイクから、店頭での対話の場へ。

「群言堂の美しい循環を遺していきたい。」

今、樽川さんが届けているのは、自らの実感に基づいた「伝わる」言葉と、未来にも遺していきたい「暮らしの在り方」です。


樽川さんのように、自分の大切にしている価値観に耳を傾け、それを誠実に仕事に活かしたい方にとって、群言堂は自分を見つめる場所になるはずです。 嘘のないものづくり、そして自分を誤魔化さない生き方を、私たちと一緒に深めていきませんか。

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■募集職種
暮らしを一緒に考える店舗スタッフ

■職種説明
この仕事は、お客様の話に耳を傾け、暮らしの背景や価値観を理解しながら、その人に合った心地よさを一緒に見つけていく役割です。

「何を売るか」ではなく、
「どんな暮らしを大切にしたいか」を一緒に考える仕事です。